2009年10月23日金曜日

事業再生ー第二会社方式へ

ある顧問先法人の話。この法人は、県の中小企業再生支援協議会の再生案件である。私は、再選計画の実行段階に入ったのちに、ある関係者の方から紹介があり、あらたに顧問税理士となった。

この再生計画には大きな欠陥があったと言わざるを得ない。なぜなら、1)再生計画のための財務洗い出し作業(財務DD)の際に、1500万円ほどの公租公課の未払い債務を把握しなかったこと(簿外債務状態)2)再生に必要な運転資金を考慮せずに、再生計画を組んでしまったからである。

必要な運転資金は、次の式で求められるが、この会社は約3000万円と見積もられた。
 運転資金=売掛金+在庫ー買掛金

したがって、この二つの原因として、必要なキャッシュ見積もりが、上記1)2)を原因として、約5000万円過少になったまま、再生計画が作成されてしまっていた。その再生計画では、債権の切り捨ては一切ない。

その後、再生計画の実行がむりであることは、計画の実施後数か月で明らかとなり、会社は、再生計画の見直し、新規融資またはリスケを求め続けた。その結果、再度3か月の元本返済猶予をしていただいた。合計で半年のリスケにとどまった、これ以上の見直しは、ダメと門戸を閉ざされてしまった。

会社は、再生協議会の再生計画を捨てて、民事再生法といった法的枠組みによる再生を求めて、ある弁護士事務所に相談に伺ったところ、第二会社方式を提案されている。

これからどうなるか? 
次の一手は、取締役会を開いて、私などの外部専門家を招いて、意思決定を行うことになる。
私も、自分の勉強のためにも、また、会社のためにも、これから、経営陣とともに汗を流していこうと思う。

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2009年10月20日火曜日

新規設備投資の是非

ある顧問先企業さまから、1000万円超の新規設備の導入計画のお話があった。この場合、ファイナンスの教科書では、1)その新規設備の導入によって、生じる将来キャシュフローを時系列に見積る。 2)その実現可能性と安全利子率を勘案した割引率を見積もる。 3)将来キャッシュフローと2)の割引率でもって現在価値に引きなおした総額もって、総投資額と比較して、現在価値額のほうがおおきれば、新規設備投資を行うという意思決定をするということなんだろう。
 しかし、何もしなければつぶれてしまうという状況と、割引率、将来キャッシュフロー見積もりが正確性を期待できないという中では、実際は、経営者のカンと度胸で、意思決定することになる。

この企業でも、先月にこの設備投資計画を打ち明けられて、今月導入するという決定の報告を受けた。

社長は、これをリースで賄うとしているが、私は、この企業が創立30年以上経過していることによる信用をもとに、銀行から借り入れを行って調達するほうをお勧めしている。

実質利回りベースで10%程度は、銀行借り入れのほうが有利ではないだろうか?

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2009年10月16日金曜日

証拠資料にあらわれてこないもの

税金の あれ?そうなの!?といった身近なよもやま話を 2つほど。


1.普通預金通帳につく利息は、すでに税金がひかれている。

2.消費税は4%で、消費税等は5%である。

税金には多くの種類があるが、大きなわけ方として国税と地方税とがある。
上記の2つのテーマの共通点でもある。


1.普通預金通帳につく利息は、すでに税金がひかれている。
信用金庫の普通預金通帳には親切に 普通預金利息 100 (国19 地6)と書いてあった。
もちろん、この()書きは記載されていない通帳の方が圧倒的に多い。
()は何か、というと、天引きされた税金の金額になる。
本当の受取利息は 125円。  内訳は、 普通預金 100円  税金 25円  となる。
受取利息全体でみると、税金は20% そのうち国税分が15%、地方税分が5%になっている。


2.消費税は4%で、消費税等は5%である。
消費税が4%というのは、ピンとこない・え?と思うのではありませんか?
一般の方でも、会社の方でも、お店で消費税としてとられるのは5%。
だから、消費税は5%と考えるのは自然なことです。

消費税4%と、消費税等5%の差、1%は何か?
地方消費税 1%です。
課税事業者が、申告書として作成し、申告するのは決算期に年1回。
地方分の消費税の申告は、国税分と一緒に国に一旦納付するので、あまり気づかれません。


では、
自動車重量税と自動車取得税、どちらが国税でどちらが地方税でしょう?

自動車重量税は自動車を車検に出したとき。(国税)
自動車取得税は、自動車を買ったとき。(地方税)

国税でも、地方税でも 『税金』、としか考えないのも一つですが、
ひとつひとつの税金について調べると、以外に節税の仕方も学べますよ。

国税・地方税の税目(財務省HP)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/001.htm

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2009年10月15日木曜日

企業も民主党体質に?

今日のタイトルは、ある銀行支店長との話の中で、支店長から出たフレーズだ。

私は、このフレーズを初めて耳にしたので、どういう意味なのかをお尋ねした。支店長も明確に意味、ニュアンスを把握していないようだったが、このフレーズを顧客回りをするなかで、何度となく耳にしたそうである。一体どう意味だろうか?

1.民主党政権になって、新規需要が生じるであろう業界をさすのだろうか?

  例えば、介護、社会福祉サービス業界は、新たな有効需要が期待できるかもしれない。反対に建設業界は、マーケットの縮小に直面する可能性が高い。しかし、それは業界単位での話だろう。「企業も民主党体質に」の意味するとこは、個々の企業のことを言っていると思われる。

2.企業のニーズ、ウオンツを政治に反映する場合の交渉プロセスやコミュニーケーションルートのことだろうか? 自民党政権下では、自民党系市議会議員ー県会議員ー国会議員ー行政官庁というプロセスだったのが、民主党政権ではこれが変わることを指しているのか?

しかし、その支店長の顧客回り先は、自分でコツコツと自助努力で営んでいる方方だろう。これも違い気がする。

企業が民主党体質に変えていかなければという意味がなんだろう。

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2009年10月14日水曜日

事業承継は、人の心から

税理士は、外部の目が入りにくい中小企業にとって、比較的、冷静にものを見ることができる貴重な存在ではないかと自負している。それだからだろう、私は、そろそろ、社長さんが年をとってきて、顧問先企業の経営が乱れてきたことが見えてしまうことがある。今日、訪問した企業で事業承継について、親子経営者の対立を目にすることになった。

この会社では、銀行リスケの交渉過程で、銀行団が、リスケに応じる条件として、経営不振の責をとって、父親が実権のない会長職に退任させられ、息子さんが社長になっている。今日、息子さんから兼ねて依頼を受けていた、父親の意思決定により事業参入をしたが、不振がつづく事業の譲渡について、購入に興味を示している会社に対する次の一手の相談をしたのだが、父親が、相手方がうさんくさいという理由(その実、相手方は誰であるかについて守秘義務の関係で開示されていないのだが)反対、息子が賛成をして、当面、父親の意見を尊重して、売却話をストップすることになった。

また、別の会社の会社の社長さんは、70代後半の方である。息子さんがおられ、かって、その会社の経営陣に加わっていたが、意見の対立により会社から追放されてしまった。


私は、企業の存続のために、社長さんに息子さんを呼び戻して、帝王学を学ばせるべきと何度もアドバイスしたが、逆に、息子とつるんで社長を退任させる画策をしていると誤解を受けて、警戒されてしまった。

両方のケースとも、もし、すんなり、事業承継が行われていたら、退任する父親は、自分は失敗したという思いにとらわれてしまうことだろう。あの方法の、この方法のメリット、デメリットはああだこうだというテクニカル論に走る前に、その人の心を思いやることの大事さに思いを致しているところである。

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2009年10月13日火曜日

中古資産の償却期間は、3通り

減価償却費の損金算入の条件は、1)帳簿上、費用として経理すること、2)損金算入限度額を超えてはならないことの2点である。したがって、会計原則の要請をちょっとわきに置いておくとして、「ある年度の損金計上額をいくらにするか?」は、その償却費を控除した結果としての納税コスト、決算書に対する銀行の反応を予想しながら、鉛筆をなめなめして決めることが行われてきた。

今日は、中古資産の耐用年数について考えてみたい。損金算入額の計算には、資産の取得価額、耐用年数が必要だが、中古資産の耐用年数には3つの決定方法がある。1)納税者が適正に(つまり、自分の胸に手をおいて(あくまでも自分の胸ね。隣の女の子の胸じゃないよ!)良心にやましくない限度で)見積もった年数、2)通達が定めた簡便法、3)新品に適用される法定耐用年数。

2)の簡便法とは、原則として、(法定耐用年数ー経過年数)+(経過年数×20/100)で求めた年数である。

では、これらの3つの方法のうち、誰が、いつ、何をチョイスすることができるかが問題になるよね。それは、納税者が、その中古資産を事業の用に供した年度において(のみ)、この3つの中から選択することができる。つまり、納税者がオプションを持っているわけ

選択しなかった場合には、新品に適用される耐用年数が適用されるが、この点について、課税当局との間で争われた事件があった。事件の概要は、1)個人事業者は、法定耐用年数を超えて経過年数がたっていた車両をY0年に購入。2)当該個人は、Y3年度に事業開始し、この車を事業の用に供した。3)この車両に耐用年数見積もりの簡便法を適用していたら、Y2年度で償却終了しているはずだった。つまり、Y3年度には償却可能期間が徒過していたわけ。 このような事実関係のもとに、Y3年度に償却できるかどうかが争われた。つまり、課税庁は、耐用年数選択のオプションを行使しなかった場合、2)の簡便法が強制適用になると主張したわけ。

この事件は裁判所の手前の手続きである国税不服審判所で解決した。審判所は、選択権を行使しなかった場合には、新品の耐用年数が適用されると判断したわけ。(納税者の勝ち)

これは、条文や通達の日本語解釈としてもその通りだと思う。

納税者の立場としては、鉛筆のなめなめ範囲を大きくするために、取得した年度に簡便法を選択しておくことがいいんだろうね。そうすると、年度ごとの損金算入額が最も大きく出るから。

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2009年10月10日土曜日

ポールクルーグマン教授の経済入門

この本が初めてアメリカで出版されたのが1994年のことだから、15年前のことである。
経済学のような社会科学系の本は、執筆当時の経済とか世の中の問題に対して解決策を提案することが、執筆の大きな理由だ。

15年後の今、この本を読み終わって、1994年当時と今との社会の状況がほとんど変わっていないのに驚いた。だから、教授の主張が現在の状況を前提にして読んでいる今の私にもビンビンに響いてくる。

私がよんだ文庫本(ちくま学芸文庫)では、おまけとして、「日本がハマった罠」という一章がある。そこでは、大学時代に習ったが、卒業後は、大学時代のマドンナと同じようにすっかり記憶から消されてしまった、IS-LM曲線を使って、日本が(通貨供給量が)流動性の罠にはまってしまっている、だから、この罠から救い出すために、金融当局は、目標インフレ率を示してインフレ誘導策を提案している。

ところで、今年になって、エコポイントとか、エコカー減税、あるいは休日1000円高速料金制度を導入したけど、これって、一種のインフレ誘導策じゃないかな。

つまり、スーパーの閉店セールと同じで、期間限定で、安く買える。期間を過ぎると高くなる(つまり、インフレになる)。だから、お金の価値が高いうちに消費しておこうという消費刺激になるよね。 今の不況は、消費不況(需要不足)が原因だから、インフレ導入政策って、そんなにおかしくないよね。

この本は、算数をほとんど使わずに経済を説明してくれている。皆さんにお勧めしたい本ですが、どう思う?

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