しかし、この課税所得は、減価償却費に手心を加え(不肖 私が)、また、役員給与をゼロとした上でのエンピツをなめなめして出した数字だ。そのほかに過去から積み上がった粉飾額が8000万円ほどあり、実質上の債務超過会社である。
この会社は、メインバンクがない。社長が貸してくれる銀行を駆けずり回っている。そして、与信審査の結果がGOサインとなると、その銀行が他の銀行からの借入金の肩代わりを申し出るので、結果として、数年単位で、メインバンクが変わってしまうのだ。
(メイン銀行がないといって、数年単位でメインバンクが変わってしまうという論理矛盾はちょっとわきに置いておいて)
私は、この会社とのお付き合いしていくうちに、「会社と銀行との距離感」を考えさせてくれた。私は、銀行に対して、正しい数値をタイムリーに開示するべきであるという立場だった。
銀行を会社再建チームの仲間に引き入れて会社を再建をしていこうと考え、その上で、月次決算書の開示、銀行に対する決算報告会等を提案した。つまり、チーム内での情報の共有だ。
一方で、社長は、銀行に対して、多少、距離を置いて、必要なら決算数値もお化粧することもかまわないという考えだった。
本年7月に、新たにS銀行から1億円以上の新規融資を受けて、昨年からメーンバンクになったKK銀行からの借入金を返済して、S銀行をメーンバンクにしてしまった。しかし、S銀行からしてみれば、自分をこの会社のメーンバンクとは考えていないだろう。
(さっきの論理矛盾は、私的にはこれで解消している)
メインバンクがないと、再建の際に、汗をかいてくれる債権者(通常、メインバンクが引き受けてくれることが多い)がいないので、再建が難しくなる。
私はというと、S銀行との借り入れ交渉のお手伝いをしたのち、その融資が出たとたん、顧問契約の解除を伝えられ、この法人の行く末を直接見届ける機会を失ってしまった。(私は、税理士と顧問先企業との距離感を間違っていたといえる)
会社と銀行の関係は、お互いの利害がシンクロしていないから微妙なものがある。(これは、リーチャド・プーリーが書いたファイナンスの教科書で詳しく分析している)
やっぱ、彼の銀行に対する距離感は、会社にとって良くないと思うのだが・・・

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